「アパレル業界ってどんな仕事があるの?」「業種や職種が多すぎてよくわからない」
そのようにお悩みではありませんか?たしかにアパレル業界には様々な業種があり、さらに専門用語も多いので、一見しただけではどんな仕事があるのかよくわかりませんよね。
しかし就職や転職の際には、これらについてよく理解しておかなければなりません。
そこでこの記事では、アパレル業界の構造・業種・職種について詳しく解説します。業界の現状や動向についても解説しますので、ぜひ参考にしてください。
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アパレルとは

アパレルとは、衣料そのものや、商業的な「衣料産業」を指すときに用いられる言葉です。
そして、営利目的で衣類の企画・製造・販売に関わる業界を「アパレル業界」と言います。
似た言葉に「ファッション」がありますが、これは「装い」や「流行のスタイル」などより広い意味を持ち、インテリア・音楽・雑貨・価値観などのライフスタイル全般を含みます。
「業種」と「職種」の違い

「業種」は事業の種類を指し、「職種」は仕事内容による区分です。
例えば、商品の販売を事業とするスーパーの業種は小売業。スーパーに勤めて店舗に立ち接客を行っているなら「小売業の販売職」、人材の採用・育成等を行う立場なら「小売業の人事」となります。
業種をどのように分けるかは、総務省の「日本標準産業分類」により定められています。
しかし、この中に「アパレル業」という区分はありません。
アパレル業界は「繊維工業」や「小売業」など様々な業種により成り立っており、これをわかりやすくするために、まとめて「アパレル業」と表現することがあります。
川上・川中・川下に分類されるアパレル業界の業種

アパレル業界は、服の原料の生産から消費者の手元に届くまで、さまざまな業種により成り立っています。
この流通経路は川の流れに例えられ、関わる業種は一般的に「川上」「川中」「川下」に分類。
川上:服の原料や素材を生産する業種(糸・布・ボタンなど) 川中:川上で作られた素材を元に衣料をデザイン・製作する業種 川下:出来上がった商品を消費者に届ける業種 |
私たち消費者にとって一番身近なのが販売を行う「川下」の業種ですが、近年では製造~販売まですべての機能を持つ「SPA」などの業種も増え、この区分は曖昧になりつつあります。
アパレル業界【川上】の代表的な業種

ここでは、糸や生地を製作する「川上」の業種をご紹介します。
川上で作られた製品は、「川中」のメーカーに販売して事業が成り立っています。
①繊維メーカー
繊維メーカーは、アパレル製品に使用される以下のような繊維の研究・開発・製造を行う企業です。
天然繊維 | 綿・麻・絹・ウール など |
化学繊維 | ポリエステル・アクリル・レーヨン・ナイロン など |
また近年では、撥水性や難燃性などを持つ高機能繊維や、軽くて強い炭素繊維(カーボンファイバー)なども開発されています。
こうした繊維はアパレル業界で活用されることはもちろん、自動車・医療・スポーツなどでも幅広く活用されていますよ。
②テキスタイルメーカー
テキスタイルメーカーは、服の元となる生地・布の企画生産を行う企業です。
織物を作る「機屋(はたや)」、ニット生地を作る「ニッター」など細かく分類することができますが、総じてテキスタイルメーカーと呼びます。
後ほどご紹介するアパレルメーカーやテキスタイルコンバーターからの依頼を受け、生地の生産を行い、基本的には企業への販売を行っているようです。
しかし近年では、一般の消費者に向けて生地の販売を行うメーカーも出てきました。織り方・染め方等を工夫して、「使ってみたい」と思わせる生地を作るのが仕事です。
③テキスタイルコンバーター
テキスタイルコンバーターは、上記で解説したテキスタイルメーカーに代わり、アパレルメーカーに生地を販売する卸売業者のことです。
アパレルメーカーの要望やトレンドを予測し、市場が求める生地を製作するための環境を組み立てます。具体的な業務の流れは以下の通りです。
- アパレルメーカーのニーズやトレンドの調査・予測
- ニーズに合った生地を企画
- 生地を発注するテキスタイルメーカーを決めて依頼
- 何度も擦り合わせを行って理想の生地を開発
- アパレルメーカーに営業・販売を行う
どのテキスタイルメーカーにどのような特徴があるのかを熟知しておくことや、市場のニーズを的確に把握する力が求められます。
アパレル業界【川中】の代表的な業種

次に、川上のメーカーでつくられた糸や生地を元に商品の製造を行う、「川中」の業種を紹介します。
①アパレルメーカー
アパレルメーカーとは、衣料品の企画・製造を行い、アパレル小売業への販売・卸売りを行う企業です。
専業アパレルメーカー | 特定の部門に特化(婦人服・紳士服など) |
総合アパレルメーカー | 2部門以上を扱う |
百貨店メーカー | 百貨店に流通ルートを持つ |
専門メーカー | 単独の専門店に流通ルートを持つ |
縫製の自社工場を持つ日本のアパレルメーカーは少なく、縫製は外部の縫製工場などに委託する場合が多いのですが、製造のみを請け負っている業者はアパレルメーカーとは呼びません。
そして、アパレルメーカーの名前がそのままブランド名として認知されることもありますが、「アパレルブランド」と「アパレルメーカー」は異なるものです。
例えば、アパレルメーカー「オンワードホールディングス」は、コンセプトごとに「23区」「組曲」「TOCCA」「anySiS」などのアパレルブランドを展開しています。
②OEM
OEMとは「Original Equipment Manufacturing(Manufacturer)」の略で、自社ではなく他社のブランド製品を製造する、もしくは自社で製造したものに他社のブランド名をつけ販売する企業を指します。
OEMは、アパレル業界に限らず自動車や家電業界でも利用される形態です。
アパレル業界では、前述のアパレルメーカーが縫製を委託する企業がこのOEMということになります。
OEMであれば受託会社は開発費がかからず、販売先の開拓も必要ありません。一方委託をするアパレルメーカーも、設備投資の必要がなくコストを抑えて商品を調達できます。
③ODM
ODMとは「Original Design Manufacturing(Manufacturer)」の略で、アパレルメーカーから依頼を受け、商品のデザインと製造を行う企業を指します。
前述のOEMは製造のみを請け負う業種であるため、依頼するアパレルメーカーは社内にデザイナーやパタンナーなどを置き商品を開発する必要がありますよ。
しかしODMを利用すれば、依頼主に洋服のデザインや開発のノウハウがなくても商品を製造することができるのです。
ODMはOEMが発展してできた業種ですので、この両方を請け負っている企業も少なくありません。
④SPA
SPAとは「Specialty store retailer of private label apparel」の略で、アパレル商品の企画・製造・販売まですべての工程を行う企業を指します。
これまでご紹介したOEM・ODM・SPAをわかりやすく説明すると、以下の表のようになります。
企画・デザイン・開発 | 製造 | 販売 | |
OEM | 発注元が担当 | ○ | 発注元が担当 |
ODM | ○ | ○ | 発注元が担当 |
SPA | ○ | ○ | ○ |
発注コストがかからないため商品を低価格で提供できること、消費者のニーズをすぐに商品に反映させられるのがメリットです。
アパレル業界【川下】の代表的な業種

最後に、商品の販売を行う「川下」の業種を紹介します。
川下の業種では、川上・川中の業種を経て作られたアパレル商品を消費者に届ける役割を担っていますよ。
①アパレル小売り
アパレル小売り業は、アパレルメーカーから仕入れた商品を、一般消費者に向けて販売する業種です。
ただ販売を行うのではなく、ブランドの世界観を意識したマーケティングや接客、コーディネートやライフスタイルの提案などを行い付加価値を提供します。
たとえば、百貨店・専門店・ショッピングセンター・セレクトショップ・ECサイトなどがこれにあたります。また、古着の2次流通などもアパレル小売業です。
これらは、実店舗を持つ「店舗小売業」とECサイトを通して店舗を持たずに販売を行う「無店舗小売業」に分けることができます。
しかし、近年はではタブレットを活用した接客など、実店舗でもネットを活用したサービスが盛んに取り入れられており、この境界は曖昧になりつつあります。
②製造小売業(=SPA)
製造小売業は、「川中」でご紹介したSPAと同義です。
SPAでご紹介した通り、製造小売業では川上~川中の業種が行う製造の工程も担うため、消費者と直接対面して得られるニーズをそのまま製造に活かせます。
アパレル業界の代表的な14の職種

アパレル業界の主な業種について理解したところで、続いてアパレル業界の「職種」について見ていきましょう。
- 販売員
- デザイナー
- パタンナー
- MD(マーチャンダイザー)
- バイヤー
- 商品企画
- 商品管理
- 生産管理
- プレス(アタッシュドプレス・PRエージェンシー)
- VMD(ビジュアルマーチャンダイザー)
- マーケティング
- ECサイト運営
- 営業
- 事務
①販売員
販売員は、店頭に立って商品を販売する、コミュニケーションスキルや提案力が求められる職種です。
ただ「販売する」というと単調で単純な仕事のように感じられますが、その業務は商品の在庫管理・売上管理・ディスプレイの考案・お客様への提案など多岐にわたります。
一般的にアパレル企業に勤める場合、総合職で採用されたとしても、まずは販売員としての経験を積ませることが多いです。
また、アルバイトからスタートして副店長・店長・エリアマネージャーなどに昇進するケースもあります。
②デザイナー
デザイナーは、洋服やファッション雑貨など、商品のデザインをする職種です。
デザイナーになるためには、一般的に服飾系の学校へ行き学ぶことが多いですが、特別な資格等は必要ありません。しかし、服に関する知識はもちろん、色彩感覚や美的センスが必須です。
また、自分が作りたい服・着たい服を作るためにデザイナーを目指す方も多くいますが、既製服のデザインをする場合は「自分が作りたい服」ではなく「売れる服」をデザインする必要があります。
そのため、トレンドの分析や市場調査が欠かせない職種といえます。
③パタンナー
パタンナーとは、デザイナーが書いたデザイン画からパターン(型紙)を起こす職種です。
つまり、平面の布を立体化するための洋服の設計図を作る仕事です。また、デザインを量産する場合はパターンのサイズ展開(グレーディング)も行います。
こちらも特に資格等は必要ありませんが、多くの人は服飾系の学校でこの技術を学びます。
パターンの良し悪しで商品のクオリティーに大きな差が出る、重要なポジションです。
④MD(マーチャンダイザー)
MD(マーチャンダイザー)とは、商品の企画・開発・販売計画(マーチャンダイジング)を行う職種です。
具体的な仕事は以下の通りです。
- 市場調査やトレンド分析を行う
- 調査結果をもとに商品を企画・開発
- 商品をの数量や価格を決定する
- 市場のニーズを見極めて流通のタイミングを決定する
企画から販売まで幅広く携わる職種で、高い分析力と柔軟な対応力、アパレルに関する広い知識や流行を読む力などが必要とされます。
⑤バイヤー
バイヤーは、アパレル企業や個人が経営するショップに勤め、そこで販売する商品の買い付けを行う職種です。
トレンドや消費者の動きを調査して目利きし、価格の交渉や販売管理などを担います。
海外を拠点とする場合もあれば、国内外を飛び回ることもあるなど働き方は様々ですが、いずれにしてもアパレル業界での販売経験・高いコミュニケーションスキル・語学力が欠かせません。
⑥商品企画
商品企画とは、自社のコンセプトに沿った商品を企画・開発する職種です。
先にご紹介した市場調査・企画・販売までを一貫して行うMDと似通っており、デザイナーと共に仕事をすることが多いポジションです。
商品企画は、「アパレルプランナー」や「ファッションプランナー」などと呼ばれることもあります。
⑦商品管理
商品管理とは、製品の仕入れ・製造・販売・販促活動の一連の流れを総合的に管理する職種です。
商品管理が不適切な場合、売れ筋商品の在庫切れによる販売機会の損失、在庫過多による保管コストの増加や在庫破棄などに繋がってしまいます。
売れ行き等を予想して適切な発注や生産指示を出すことで利益の最大化を可能にする、企業が利益を生むためにとても重要なポジションです。
⑧生産管理
生産管理とは、商品の生産から納品までを一貫して管理する職種です。
具体的には、縫製工場の選定・生地やボタンといった素材の調達・商品生産に係る価格の調整や交渉・進捗管理などを行います。
マネジメントスキルや適切な判断力が必要になるほか、海外生産する場合には外国語でのコミュニケーションが必要になることもあります。
⑨プレス(アタッシュドプレス・PRエージェンシー)
プレスは、アパレルメーカーやPR会社に所属し、自社または発注元のブランドや商品の広報・宣伝・販売促進計画などを行う職種です。
ファッションショーや展示会、バイヤー向けイベントの企画やテレビ・雑誌への貸し出しなどを行います。
華やかなイメージのある人気の職種で競争率が高く、求人数も少ないうえに未経験者への求人はほぼありません。
アパレルメーカーで他部署を経験しながらプレスを目指す、PR会社でアシスタントとして経験を積む、他業種の広報で経験を積むなどして挑戦するのが一般的です。
⑩VMD(ビジュアルマーチャンダイザー)
VMD(ビジュアルマーチャンタイザー)とは、視覚的な効果によって商品の販売促進を行う職種です。
商品を魅力的に見せる「ディスプレイ」よりもより広義に、魅力的かつ商品を見やすく探しやすい、購入に繋がる環境を作るのが仕事です。
シーズンごとにプランを練って什器を手配したり、新店舗をデザインに携わって売り場を作ります。
⑪マーケティング
マーケティングは、他の業界のマーケティングと同様に、自社の商品が売れる仕組みを作る職種です。
市場を調査して販売戦略を打ち出し、コストや時間を抑えて商品を売り上げるのが仕事です。
近年ではWebマーケティングやデジタルマーケティングが重要視されており、SNS・Webサイト・モバイルアプリ等を駆使してデータを収集し、認知を広めて購入に繋げます。
⑫ECサイト運営
ECサイト運営は、ECサイト上で商品販売に関する業務を行います。
具体的には、Webサイトの構築・ECサイトに乗せる商品画像の撮影・お客様の対応・発送業務・商品PRなど、業務内容は多岐に渡ります。
ECサイトでは顧客が実物を手に取ることができない分、より細やかなサービスや対応が求められます。
⑬営業
営業とは、他の業界の営業職と同様、自社の商品を顧客に売り込む職種です。
既にできあがった商品が手元にある場合はその商品を売り込みますが、OEMなどの営業であれば、取引先のニーズを引き出し、商品製造の受注を取ってくることが仕事になります。
いずれの場合も、自社の強みや相手企業の特徴、また競合企業との違いや市場の動向などをよく理解しておく必要があります。また、コミュニケーションスキルや交渉力も欠かせません。
⑭事務
事務職では、書類作成やデータ入力、電話対応や経理などの業務を担います。
同じ事務職でも、一般・人事・総務・営業事務など、どの部署に配属されるかによって必要なスキルに差がありますが、基本的には他業種の事務職と同じようにパソコンスキルやビジネスマナーが求められます。
アパレル業界の現状と今後の動向

それでは最後に、アパレル業界の現状や課題、今後の動向について解説します。
①アパレル業界の現状
アパレル業界は、新型コロナウイルスの流行により店舗の閉鎖やブランドの撤退などが相次ぎ、2020年に一度は売り上げが落ち込んだものの、2021年以降は回復基調です。
しかし、原油価格の高騰や円安の影響によりコストが上昇し、成長率は鈍化傾向にあります。
現在はネットを活用した企業が増えており、EC販売やタブレット端末での接客、SNSを活用した集客などで競争が激化しています。
急速なデジタル化が求められており、保守的な企業の生き残りは困難な状況にあると言えるでしょう。
②アパレル業界の課題
アパレル業界が抱える一番の課題はEC対応とデジタル化の遅れでしょう。
現在売り上げを伸ばしている企業は、デジタル化の波にいち早く対応すべく、IT技術を利用して様々な取り組みを行っています。
しかし、資金力の弱い企業がこの波に乗るのは容易ではありません。老舗企業だったとしても、デジタルに対応した販売戦略やノウハウがなければ存続は危うい状況です。
③アパレル業界の今後の動向
新型コロナウイルスによる行動制限が2023年に解除されたことにより市場は回復傾向にあり、2025年にはコロナ以前の水準まで売り上げが回復することが見込まれています。
また前述の通り、新型コロナウイルスはアパレル業界のデジタル化・EC化を急速に進めました。
今後は、バーチャルフィッティングなどのファッションとテクノロジーを融合させた「ファッションテック」の領域が拡大していくでしょう。
また、SDGsへの意識が高まっている昨今、環境に配慮したアイテムの需要が高まっており、サステナブルな生産が求められていますよ。
アパレル業界の構造や業種・職種について理解を深めよう
この記事では、アパレル業界の構造や業種・職種について紹介してきました。
業種や職種を正しく理解することは、自分に合ったキャリアパスを考えるうえでとても重要です。
また、業界の仕組みや現状、課題などを理解することも、就活をする上では欠かせません。
本記事を参考に業界への理解を深め、就活に役立ててください。
このメディアの監修者
若林
青山学院大卒。 勉強が苦手過ぎた経験をもとに、学生時代に受験生への応援ブログを1年間毎日更新し、月間8000pvを記録。 新卒にて、C-mindグループの株式会社LEADに営業として入社し、初年度、年間個人売上900万以上達成。 2023年3月にメディア事業責任者に就任し、メンバーを集めつつ、半年でメディア記事を1000本公開し、現在は2000本以上の記事の監修をし、就活に役立つ情報を発信中。