ハローワークを利用して資格取得ができると聞いたことはあっても、具体的な対象者や給付金受給の条件がわかりにくいと感じている人もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、ハローワークで資格取得に関する支援の受け方や、給付金受給の要件などをわかりやすく解説します。資格の取り方や就職で悩んでいる人は、ぜひ参考にしてみてください。
ハローワークでは資格取得の支援を受けることができる

ハローワークで受けられる資格取得に関する支援は、主に教育訓練給付制度と求職者支援制度の2種類あります。
給付制度は、支払った受講費用の一部が支給される制度。支援制度は受講料無料(テキスト代は自己負担)、給付金を受給しながら訓練を受けられる制度です。
教育訓練給付制度 | 求職者支援制度 | |
---|---|---|
対象者 | 雇用保険加入者(離職者含む) | 求職者 |
メリット | 通信や夜間・土日に受講できる講座もある | ハローワークによる就職サポートあり |
デメリット | 雇用保険に加入していないと支給されない | 支給要件が細かく規定されている 一定の収入がある人は支給対象外 |
雇用保険加入の有無によって、受けられる支援や金額は異なります。対象講座は自治体によるため、近くのハローワークに問い合わせてみてください。
教育訓練給付制度の3つの種類

ここでは、以下の3点を詳しく解説します。
- 一般教育訓練給付金
- 特定一般教育訓練給付金
- 専門実践教育給付金
受講を希望している講座が該当するか確認したい人は、「教育訓練講座検索システム」を利用してみてください。
①一般教育訓練給付金
以下では、一般教育訓練給付金の詳細をまとめています。
- 支給対象者
- 支給要件期間
- 支給額
- 取得可能な資格
支給対象者
現在も雇用保険に加入している人(在職者)、または雇用保険に加入していた人(離職者)が対象です。雇用保険の被保険者となる条件は、
- 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
- 31日以上の雇用見込みがあること
この2つを満たしている必要があります。
支給要件期間
在職者 | 離職者 |
---|---|
受講開始日までに、通算3年以上、雇用保険に加入している。 (初めて受給する人は1年以上の加入) | 離職日の翌日から受講開始日までが1年以内の元被保険者。 |
例えば、転職によってA社にて1年、B社にて2年被保険者として雇用されていた場合は、通算で3年となります。
しかし、A社からB社に転職するまでに被保険者ではない空白期間が1年を超えてしまうと、A社の1年は通算されません。
支給額
支給額は、指定教育訓練施設に対して支払った教育訓練経費の20%です。上限は年間10万円で、4千円を超えない場合は支給されません。
教育訓練経費は、支払った入学料および受講料(最大1年分)の合計です。
また、受講開始日前1年以内に受けたキャリアコンサルタント(職業能力開発促進法第30条の3に規定された者)のコンサルティング費用を、教育訓練経費に加えることができます。
取得可能な資格
一般教育訓練給付金の対象になっている資格・講座の一例は以下のものです。
- 介護福祉士実務者養成研修
- 税理士
- 社会保険労務士
- Webクリエイター
- TOEIC
- 簿記検定
- 宅地建物取引士
受講する講座や施設によっては、一般教育ではなく、特定一般教育や専門実践教育に該当する場合もあります。
②特定一般教育訓練給付金
以下では、特定一般教育訓練給付金の詳細をまとめています。
- 支給対象者
- 支給要件期間
- 支給額
- 取得可能な資格
支給対象者
現在も雇用保険に加入している人(在職者)、または雇用保険に加入していた人(離職者)が受給できます。雇用保険は、
- 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
- 31日以上の雇用見込みがあること
この2つを満たしている場合、原則すべて被保険者です。
支給要件期間
在職者 | 離職者 |
---|---|
受講開始日までに、通算3年以上、雇用保険に加入している。 (初めて受給する人は1年以上の加入) | 離職日の翌日から受講開始日までが1年以内の人。 |
例えば、転職によってA社にて1年、B社にて2年被保険者として雇用されていた場合は、通算で3年となります。
しかし、A社からB社に転職するまでに被保険者ではない空白期間が1年を超えてしまうと、A社の1年は通算されません。
支給額
指定教育訓練実施施設に対して支払った教育訓練経費(入学料および受講料)の、40%が支給対象額です。
支給額の上限は20万円で、4千円を超えない場合は教育訓練給付金は受給できません。
特定一般教育訓練給付金の受給は、訓練前キャリアコンサルティングの受講が必須です。ハローワークにて、キャリアコンサルタントを紹介してもらってください。
取得可能な資格
特定一般教育訓練給付金に当てはまる資格・講座の一例は以下のものです。
- 介護支援専門実務研修
- 大型自動車第一種・第二種免許
- 自動車整備士
- ITSSレベル2相当以上
介護福祉や輸送・機械運転関係の資格や講座が多数該当しています。
③専門実践教育給付金
以下では、専門実践教育給付金の詳細をまとめています。
- 支給対象者
- 支給要件期間
- 支給額
- 取得可能な資格
支給対象者
現在も雇用保険に加入している人(在職者)、または雇用保険に加入していた人(離職者)が受給可能です。雇用保険は、以下の2点を満たしている人が加入対象となります。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
- 31日以上の雇用見込みがあること
支給要件期間
在職者 | 離職者 |
---|---|
受講開始日までに、通算3年以上、雇用保険に加入している。 (初めて受給する人は2年以上の加入) | 離職日の翌日から受講開始日までが1年以内の人。 (妊娠・出産等により適用対象期間の延長が行われた場合は、最大20年以内) |
例えば、転職によってA社にて1年、B社にて2年被保険者として雇用されていた場合は、通算で3年となります。
しかし、A社からB社に転職するまでに被保険者ではない空白期間が1年を超えてしまうと、A社の1年は通算されません。
支給額
専門実践教育訓練を受講中は、受講費用の50%(年間上限40万円)が6か月ごとに支給されます。教育訓練を修了した翌日から1年以内に就職した際には、教育訓練経費の20%が追加支給となります。
専門実践教育訓練給付金の受給は、訓練前キャリアコンサルティングの受講が必須です。コンサルタントに関しては、居住地のハローワークにて相談してください。
また、専門実践教育訓練給付金の受給対象者のうち、一定の条件を満たした失業者には教育訓練支援給付金も支給しています。
教育訓練支援給付金は、離職する直前の6か月に支払われた賃金から基本手当を算出し、その日額の80%が支給額です。
取得可能な資格
専門実践教育訓練給付金の対象例は以下のものです。
- 介護福祉士
- 看護師
- 准看護師
- 美容師
- 保育士
- 調理師
求職者の中長期的なキャリア形成の支援を目的としているため、専門性が高い資格や講座が該当しています。
求職者支援制度について詳しく解説

生活を維持する収入が少なく、金銭面で不安を感じている人が資格取得に集中しやすい環境をつくることができるのが、求職者支援制度です。
ここで、求職者支援制度の詳細をまとめています。
- 対象者
- 支給要件
- 訓練内容
- 申し込み方法
- 取得可能な資格
①対象者
求職者支援制度には、求職者支援訓練と公共職業訓練の2種類の訓練受講があり、総称して「ハロートレーニング」とも呼ばれています。
求職者支援訓練 | |
---|---|
離職者 | 雇用保険に加入したことがない離職者 フリーランス・自営業を廃業した人 失業保険の受給が終了した離職者 |
在職者 | 一定額以下の収入のパートタイムで働きながら、正社員への転職を目指す人 |
求職者支援訓練は、条件を満たせば月額10万円の職業訓練受講手当を受給しながら、原則受講料が無料で訓練を受けられます。
公共職業訓練 | |
---|---|
離職者 | 親や配偶者と同居し、一定の世帯収入がある人 (高校や大学は卒業したが就職はしていない人など) |
在職者 | 働いていて一定の収入を確保しつつ、正社員への転職を目指す人など |
公共職業訓練は、雇用保険を受給している求職者を対象としています。職業訓練受講手当は受給できませんが、訓練が無料で受けられます。
いずれの受講形態においても、訓練受講を希望する人は必ずハローワークに求職の申し込みをしてください。
②支給要件
職業訓練受講給付金は、2023年4月に開始する訓練以降で受給の要件が緩和されました。2023年12月時点での、給付金の支給要件は以下の項目です。
① 本人収入が月8万円以下
② 世帯全体の収入が月30万円以下
③ 世帯全体の金融資産が300万円以下
④ 現在住んでいるところ以外に土地・建物を所有していない
⑤ 訓練実施日全てに出席する
(やむを得ない理由により欠席し、証明できる場合(育児・介護を行う者や求職者支援訓練の基礎コースを受講する者については証明ができない場合を含める)であっても、8割以上出席する。)
⑥ 世帯の中で同時に給付金を受給して訓練を受けている者がいない
⑦ 過去3年以内に、偽りその他不正の行為により、特定の給付金の支給を受けていない
⑧ 過去6年以内に、職業訓練受講給付金の支給を受けていない※①又は②を満たさない場合であっても、本人収入が月12万円以下かつ世帯収入が月34
厚生労働省「求職者支援制度のご案内」より
万円以下で③~⑧を満たす場合は、訓練施設への交通費(通所手当)を受給すること
が可能です。
上記の条件をすべて満たしている場合、職業訓練受講手当として月額10万円が支給されます。1か月ごとの指定来所日にその都度給付金の申請が必要です。
③訓練内容
訓練内容は各都道府県によって異なりますが、以下のような訓練コースがあります。訓練期間は、2か月から6か月程度です。
求職者支援訓練 | 公共職業訓練 | |
---|---|---|
主なコース | IT分野 営業・販売・事務分野 介護福祉分野 機械関連分野など | テクニカルオペレーション科 電気設備技術科 自動車整備科 造園科 介護サービス科など |
その他 | 基礎コースと実践コースがある。 | 育児中、介護中など一部の人を対象とした「eラーニングコース」もある。 |
ハローワークインターネットサービス内には、「ハロートレーニングコース情報検索」が設けられているので、自治体の開設コースをチェックしてみてください。
④申し込み方法
訓練受講や職業訓練受講給付金の手続きは、以下の流れです。
- ハローワークで求職申込み・職業相談
- 訓練の受講申込み
同時に、給付金の審査を申請(対象者に限る) - 面接・筆記試験等を受験
- 合格したら受講あっせん
- 毎月指定来所日にハローワークで職業相談を受け、給付金の申請を行う
募集期間や開校日、募集定員などが定められているため、必ず希望コースを受講できるわけでは無い点は考慮しましょう。
⑤取得可能な資格
求職者支援制度(ハロートレーニング)の活用で取得可能な資格の一例として、以下のものが挙げられます。
- 介護職員初任者研修修了
- 簿記検定
- 医療事務認定実務者試験
- 第一種電気工事士
- 基本情報技術者
- 宅地建物取引士
- フェイシャルエステティシャン
厚生労働省の「求職者支援制度のご案内」には訓練受講者の声も掲載されており、取得資格のほか就職先や受講感想が確認できますよ。
ハローワークの制度で資格を取得する際の2つのポイント

ハローワークを利用した資格取得は、条件を満たせば無料で受講できる点から「とりあえず受講してみよう」と思う人もいるのではないでしょうか。
しかし、あくまでの制度の利用であることを忘れず、次の2点は忘れないようにしてください。
- 出席・修了要件を満たすようにする
- 本当に自分の取得したい資格か考える
ここでは、各ポイントを詳しく解説します。
①出席・修了要件を満たすようにする
教育訓練給付金・求職者支援制度は、いずれも主体的なスキルアップを前提としており、制度はサポートに過ぎません。
例えば、教育訓練給付金制度を活用できる講座や訓練施設の場合、修了試験の結果が基準点以上であることが条件のひとつです。
求職者支援制度はすべての訓練日への出席が必須で、全訓練期間のうち出席率が8割に満たないと対抗処分になるおそれもあります。
②本当に自分の取得したい資格か考える
取得を目指している資格が、自分の求職の役に立つのか考えましょう。求職者支援制度等で取得できる資格は求職に役立ちますが、あなたが求人を探している業界で活用できるとは限りません。
教育訓練給付制度や求職者支援制度は、キャリアップや就職のサポートを目的とした制度です。就職を最終目的に定め、自分にとって必要な資格を考えてみてくださいね。
どの業界に就職しようか悩んでいる場合は、ハローワークにて適性検査やキャリアの相談もできるので、まずは相談してみましょう。
ハローワークの資格取得支援を有効に活用しよう

本記事では、ハローワークの資格取得支援の活用方法を解説しました。
細かい条件がありますが、ぜひ本制度を確認して活用してみてください。そして資格取得をしてキャリアアップを目指してみてください。
このメディアの監修者
若林
青山学院大卒。 勉強が苦手過ぎた経験をもとに、学生時代に受験生への応援ブログを1年間毎日更新し、月間8000pvを記録。 新卒にて、C-mindグループの株式会社LEADに営業として入社し、初年度、年間個人売上900万以上達成。 2023年3月にメディア事業責任者に就任し、メンバーを集めつつ、半年でメディア記事を1000本公開し、現在は2000本以上の記事の監修をし、就活に役立つ情報を発信中。