公務員の懲戒免職とは?処分事例や退職金・転職への影響を解説
公務員を目指している人であれば「懲戒免職」という言葉を、一度は耳にしたことがあるかもしれません。しかし、懲戒免職がどのようなものなのか、はっきり理解している人は少ないでしょう。
本記事は、懲戒免職にされてしまう理由や懲戒免職となった後、退職金や年金などにどのような影響が出るのかについて解説します。
ぜひ、この機会に確認しておきましょう。
懲戒免職とは公務員に科される最も重い処分

まずは懲戒免職とは何かを詳しくみていきましょう。
①懲戒免職とは
懲戒免職は、公務員の仕事を強制的に解雇させられる際に使用されます。例えば、殺人や公金の横領、飲酒運転などを起こした際に懲戒免職となる可能性が高いです。
また、公務員のみに適用されるもののため、一般企業に勤めている人には使われません。
②懲戒処分の種類
公務員の処分については、懲戒免職以外にも3つの処分があります。以下は公務員の処分の項目で、上から下に行くにつれて処分の内容が重くなります。
処分 | 内容 |
---|---|
戒告 | 問題を起こした際に最初にされる警告のこと |
減給 | 問題を起こした際に一定期間給与が減額されること |
停職 | 問題を起こした際に一定期間職務を停止すること |
免職 | 問題を起こした際に雇用契約を解除されること |
なお、問題を起こした際に、どの処分が下されるかはそれぞれの地方自治団体、あるいは条例によって変わります。
③懲戒免職と懲戒解雇の違い
懲戒免職と似た言葉に懲戒解雇というものがあります。中には同じ意味だと思っていて、間違えて使用してしまっている人もいるでしょう。
雇用契約を解除されてしまうことに変わりはありません。しかし、懲戒免職と懲戒解雇では処罰の対象が異なります。
懲戒免職は公務員として働いている人に使われるもので、懲戒解雇の場合は一般企業で働いている人に使われます。
例えば、公務員の人が何か問題を起こした際に、処分の内容として雇用契約を解除される場合は、懲戒解雇ではなく懲戒免職となります。
懲戒免職を科される主な事例4選

懲戒免職が課される事例としては、以下の4つがあります。
また、それぞれの事例において、いくつか問題行動の内容とどのような処分が下るのかについても解説します。
①一般服務関係
一般服務関係では、無断欠勤などが該当します。公務員には特に理由がないのにもかかわらず、21日以上欠勤が続くと免職になる可能性があります。
ただし、20日以内であっても戒告や停職、減給の処分がありますので注意が必要です。
その他、一般服務関係で該当する問題行動としては、主に以下のものがあります。
問題行動の内容 | 処分の内容 |
---|---|
遅刻や早退を繰り返す | 戒告 |
事実を捏造するなどの虚偽報告 | 減給か戒告 |
職務中に知った情報を故意に漏らす | 免職か停職 |
セクシャル・ハラスメント | 度合いにより4つの処分のうちどれかが下る |
パワー・ハラスメント | 度合いにより4つの処分のうちどれかが下る |
②公金官物取扱い関係
公金官物取扱い関係と聞くと、なかなかイメージできない人も多いでしょう。主な該当内容としては下記のとおりです。
問題行動の内容 | 処分の内容 |
---|---|
公金や官物を横領した | 免職 |
公金や官物を窃盗した | 免職 |
公金や官物を紛失した | 戒告 |
わざと官物を破壊した | 減給か戒告 |
過失により官物の出火を引き起こした | 戒告 |
③公務外非行関係
職務中以外であっても、問題行動を起こしてしまうと処分の対象になりますので、注意して生活する必要があります。
主に、公務外非行関係に該当するものは以下のとおりです。
問題行動の内容 | 処分の内容 |
---|---|
放火 | 免職 |
殺人 | 免職 |
傷害 | 停職か減給 |
暴行や喧嘩(傷害に至らなかった場合) | 減給か戒告 |
器物破損 | 減給か戒告 |
④飲酒運転・交通事故・交通法規違反関係
最後は、車の運転に関わる問題行動です。内容としては飲酒運転や交通事故、交通法規則違反が該当します。
問題行動の内容 | 処分の内容 |
飲酒運転 | 度合いにより4つの処分のうちどれかが下る |
交通事故(飲酒運転での事故以外) | 度合いにより4つの処分のうちどれかが下る |
交通規則違反(飲酒運転での交通規則違反以外) | 度合いにより免職以外の処分が下る |
車の運転は、住んでいる地域によって生活するのに必要な人もいるでしょう。運転時は上記の問題を起こさないように、十分に注意しましょう。
懲戒免職後の退職金と年金の取扱い

通常の退職時には退職金と年金がもらえます。しかし、懲戒免職となってしまうと退職金と年金にも影響が出ます。あらかじめ、どのような影響が出るのか把握しておきましょう。
①懲戒免職の場合退職金はもらえない
もし、公務員として働いていて懲戒免職になってしまった場合、退職金がもらえるのか気になる人も多いでしょう。
懲戒免職時の退職金については「国家公務員退職手当法12条1項」にて全て、または一部を不支給とするとされています。
それに加えて「国家公務員退職手当法15条1項」には、支払いが済んでいる分の退職手当について、返納が命じられる可能性がある旨も記載されています。
つまり、懲戒免職となった際は、退職金はもらえないと考えておいた方が良いでしょう。
②懲戒免職になると年金は減少する
懲戒免職となると、退職金と同様に年金にも影響が出てしまいます。主な影響としては「退職共済年金」か「障害共済年金」のうち、職域年金相当部分の一部が5年間支給されません。
退職金と年金の両方に言えることですが、一般企業の場合は任意の規定となるため、両方とも影響がない可能性もあります。
しかし、基本的には制限が課される場合が多いため、一般企業であっても通常通りとはいかないと思っておくと良いでしょう。
懲戒免職の転職への影響

懲戒免職となった場合、雇用契約を解除されてしまうため、新たに職を探す必要があります。しかし、一度懲戒免職となってしまうとその影響は大きく、次の職探しにも影響を及ぼしてしまいます。
新たに応募された企業としては、以前問題があった人を雇ってまた問題を起こされてしまうと、企業の評判にも影響が出かねません。
そのため、履歴書を出しても通過できない可能性が高いでしょう。また、前職を辞めた理由について面接等で聞かれた際に、嘘をつくと経歴詐称になってしまいます。
もし、正社員として働くのが難しい場合は、個人事業主や起業などの選択肢も含め検討してみましょう。
公務員志望は懲戒免職についてあらかじめ調べておこう

将来、公務員を志望しているのであれば、懲戒免職を含め懲戒処分についても事前に調べておくと良いでしょう。
公務員として働く際は、懲戒免職を含め、懲戒処分の対象とならないよう気をつけましょう。
このメディアの監修者
若林
青山学院大卒。 勉強が苦手過ぎた経験をもとに、学生時代に受験生への応援ブログを1年間毎日更新し、月間8000pvを記録。 新卒にて、C-mindグループの株式会社LEADに営業として入社し、初年度、年間個人売上900万以上達成。 2023年3月にメディア事業責任者に就任し、メンバーを集めつつ、半年でメディア記事を1000本公開し、現在は2000本以上の記事の監修をし、就活に役立つ情報を発信中。